NetflixがShopifyでECストアを公開!その背景にあるものとは?
世界的な人気を誇る動画配信サービスNetflix(ネットフリックス)が、独自のECサイト「Netflix.shop」を米国でオープンしました。
これまでNetflixは20年以上もの間、動画配信のサブスクリプション事業として消費者にサービス提供してきましたが、今回が初となる小売業となります。
そこで今回は、Netflixが今、EC参入を決断したことについて独自に考察してみました。
ShopifyによりNetflixの世界観を見事に再現されたストア
これまでもNetflixでは、WalmartやAmazon、H&Mなどの企業とコラボレーションを行いオリジナル製品の販売を行なってきました。そのNetflixが今回、初となる自社完結のECストアサイトをShopifyで立ち上げ、アパレルや雑貨を販売する自社オンラインストアを公開しました。
すでに公開されているECストアはShopifyで構築された完全なオリジナルテーマによってNetflixの世界観を見事に再現されています。すでにストアにはフランスの人気映画「Lupiun」や人気アニメシリーズの「Eden」や「YASUKE」関連の商品が並んでおり、今後は「Stranger things」や「Money Heist」など、他の人気コンテンツの商品も追加されると言われています。
販売対象は現時点(2021年6月現在)では米国に限られていますが、数カ月以内に日本を含む世界各国へ拡大される予定です。
映画館の帰りに作品のグッズをつい買ってしまうようなサービスを
これまでNetflixは動画配信という「形のないサービス」を提供する企業として展開してきました。Netflix側も今後も動画配信事業がビジネスの軸であることに変わりはないとしており、EC展開はあくまでサービス以外でもNetflixの作品を好きな人が作品やブランドと接点を持ち、繋がりを深めてもらうことを目的としていると言及しています。
とはいえオリジナルドラマなどのIP(知的財産)を多く持つNetflixであればこれまでのように自社作品の商品の販売を他社と連携して疎結合に行うよりは自社ECを立ち上げ利益に直結させるべきことに疑う余地はないでしょう。それにコンテンツから直接購入できた方が消費者の意思決定もブレません。
たとえば、映画館で映画を観終わったあとにその余韻に浸ったまま売店でグッズを買ってしまったという経験のある方も多いのではないでしょうか?
これと同じように視聴したドラマやアニメが好きになるとその関連グッズが欲しくなるのは自然な流れです。コンテンツとコマースの融合は、従来のようなコト消費を起点としたモノ消費をオンライン上でシームレスに促すこれまでにない手法であると言えるでしょう。
競合他社のような収益モデルがないNetflix
Netflixは2021年の第1四半期で新規有料契約件数400万件と予想の600万件を大きく下回りました。以前にも2019年第2四半期に米国の会員数が初めて減少に転じたと報じられたことからNetflixの成長が鈍化していること間違いないでしょう。Netflixが表明したようにNetflixのビジネスの軸はどこまで行っても動画配信サービスですので、この成長が鈍化することは何としても避けるべきだと言えます。
その一方で、Netflixの競合他社はどうでしょうか?ここで筆頭として名前を挙げたいのが、世界200カ国以上で視聴可能な「Amazon prime video」のAmazon、そして動画配信サービスとしては異例の成長を続ける「Disney +」のディズニーです。
Amazonの収益の軸はEC事業ですし、ディズニーにはグッズ販売やテーマパーク運営、映画事業など、両社とも動画配信サービスの外に軸となる収益モデルが画一されています。特にAmazonに関しては新型コロナウイルスの影響もありEC需要が拡大したことに加え、ITP*1の影響で広告収益も伸びています。
*1 ITPとは、Appleのプライバシー対策のことでサードパーティCookieが使えなくなったというもの
Netflixが現在でも動画配信サービスで競合他社を圧倒していることに間違いはありませんが、Amazonのような動画にも広告を掲載して広告収入を得るといった収益モデルもなく、ディズニーのようなグッズやテーマパークなどコンテンツの全てが完全に紐づいた収益モデルもありません。
そこでNetflixは収益モデル獲得のために自社のメインコンテンツである動画配信サービスと連動しやすく、市場の成長が著しいEC事業に参入を決めた、となるわけです。
それもこれまでのような他社との疎結合で行うのではなく作品を見た後のクロスオーバーで商品を購入される仕組みを採用するためのShopifyなのでしょう。確かにShopifyのように購買データが取得しやすいプラットフォームであればマーチャンダイジングもしやすいと言えますし、世界190カ国以上で視聴可能であるNetflixが多言語対応のECプラットフォームのShopifyでストアを構築することは必然でしょう。
あくまでも”視聴者”を喜ばせるためのEC展開
個人的にはNetflixのテーマパークも見てみたいという気もしますが、現時点の世界情勢的にNetflixのEC参入は手堅い判断と言えるでしょう。
現在の販売対象は米国のみで商品数もまだ少なく、これから充実していくのかなと思いますが、今後世界的な拡大も予定しているとのことでNetflixの人気ドラマやアニメのオリジナルグッズが買えるようになることにも大きく期待です。
Netflixには「広告ビジネスに参入してもっと収益を上げるべきだ」という声も上がっているようですが、これまで同様、純粋な動画配信サービスに力を注ぎ、あくまでも視聴者を喜ばせるためのEC展開を行うNetflixだからこそマーチャントファーストのShopifyは相性が抜群だと言えるのではないでしょうか?
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BUNTA SATO好きな花言葉はパセリの「お祭り気分」ライターのBUNTAと申します。行動心理を得意ジャンルとする平成生まれの自称元ニューヨーカーです。ちなみに嫌いな食べ物はパセリです。 |
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